日本臨床スポーツ医学会

令和8年熊本地震で被災された方々へ

第1号記事 2026.08.03
被災地の方々の健康を守るために、スポーツ医学の立場から

鳥居 俊(学術委員長、早稲田大学教授)

 猛暑、酷暑のこの時期に被災された方々は10年前の4月の被災とは全く異なる厳しい環境の中で耐え忍んでおられることとお察しします。被災で亡くなられた方々にはお悔やみ申し上げるとともに、停電や断水で厳しい環境下で後片付けをされている方々にはご自身の生命と健康を第一に考えて行動されることを願っております。

 昨今の地球温暖化により、スポーツ界も夏の競技会ではいかにして熱中症を防止するかが重大な課題となり、発汗を良くするなど暑さに身体をならす暑熱馴化、競技時間を朝や夕に変更する、大会時期を秋に変更する、途中に身体を冷やしたり水分補給をしたりする時間を設ける、など対策をとってきました。それでも観客や審判を含めて多くの関係者に身体的負荷が加わる夏の時期には熱中症発生をゼロにすることは至難の業です。

 被災地の皆様の環境は停電で屋内冷房ができなかったり、断水で飲み水が自由に手に入らなかったりなど、夏の野球大会よりも酷な環境と思います。ぜひとも、気温の高い時間帯の活動は避けていただき、ある程度の時間作業をされたら、身体を冷やして水分や塩分補給をするようにお願いいたします。熱中症が疑われるときには、もし水に余裕があればバスタオルなどを濡らして体に巻き付ける方法が最近効果的とされています。

 夜も十分な睡眠をとりたくてもとれない環境で夜もお過ごしの方が多くおられることとお察しします。車の中では脚の血管がつまってしまうエコノミークラス症候群がおこりやすいことが報道されています。少しでも脚を高くしたり、定期的に足首を上げ下げするなどの動きをするとともに、トイレに行くのをためらって脱水にならないことが予防となります。

 ご高齢の方々は脱水を自覚しにくいため、周囲の方が飲水を促して下さるようにお願いします。まだまだ暑さが続く時期であり、余震も続いています。何よりも命を大切にして行動をされることを願っております。

 追記:8月2日午前、車中泊をされていた方が亡くなったという悲しい報道がありました。この気温の中で耐えるには限界があります。夏の間アスリートたちも気温の低い高所や高緯度の北海道などでトレーニングをします。発想を転換して、九州の少しでも気温の低い高所に被災者の方々を一時的に移住していただき、高温や余震がおさまった時期に熊本に戻ってご自宅の整理や復興を目指すという考えはいかがでしょうか。地方自治体の方にも一考いただければ、と思います。

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