日本臨床スポーツ医学会

令和6年能登半島地震で被災された方々へ

第4号記事 2024.01.11 睡眠・メンタル問題の対処法

 災害の後は、不安や興奮などから、疲れていても眠れなくなる、眠りが浅くなることがよくみられます。余震が絶えない今回の震災の場合は、なおさらです。これは、こころが危機を感じ、すぐ逃げられるようになるための、正常な反応です。しかし、過度な不安、不眠が長続くと、心身に悪影響が生じます。安全な場所に避難した後は、深呼吸を時々するにようにしましょう。

 震災の発生が1月ということもあり、冬の寒さも深刻な問題です。体温調節は睡眠にとってもっとも大切であり、全身が冷えてしまうと、眠れなくなってしまいます。床に直接横にならない、衣類を重ね着して寝るなど、低体温対策は、睡眠にとっても重要です。トイレの問題は深刻なのですが、カロリーをとって体温を保つことも、眠るためには必要です。

 今回の震災では、お年寄りの被災者が多いことが特徴です。避難生活では、身体を十分に動かすことも難しいので、筋力が弱ってくる、関節が動かなくなってくるなど、生活機能に関わる問題が生じてきます。さすがにスポーツは難しいとは思いますが、機会をみてウォーキング、ストレッチを行うなどの身体活動は大切です。支援される方は、被災者の健康維持のためにも、その人や場に適した身体活動を、無理のない程度ですすめていただければと思います。

 現地では情報も少なく、不安や恐怖、絶望感が強まり、情緒を安定させることは難しい状況かもしれません。このようなとき、人とのつながり、コミュニケーションは、ストレスに打ち克つ力(レジリエンス)を与えてくれます。つらい気持ちとつき合っていくには、親しい⼈とできるだけ話をしたり聞いてあげたりして気持ちを共有し、ねぎらいあったり感謝したりすることがとても重要です。都市部よりも人とのつながりは強い地域ですので、ここは有利な点だと思います。

 直接被災していない人にも当てはまりますが、テレビやインターネットでの報道の見すぎは、精神的不安定を招きます。特にSNSは、重要なコミュニケーションツールですが、デマや誹謗中傷、無責任な発言などが入り交じり、単に眺めていても気持ちが滅入ってきます。ニュース中心に必要な情報だけ見るようにしましょう。励ましのメッセージや具体的なサポート活動の情報は、積極的に見るようにしたいものです。

 災害に対処する人、救援活動に当たる人は、どうしても気持ちが張り詰め、休憩をせずに働きっぱなしになりがちです。たまには無理をしてでも休む時間を作らないと、持続できません。休憩やときにはオフの日も作るなど、心身を癒す時間も作りましょう。

 能登半島の地形や季節の問題から、医療的支援は厳しい状況ですが、精神科医や心理師といったメンタル支援の専門家が訪れます。睡眠は災害後の健康管理には非常に大切ですので、どうしても眠りがうまくいかないひとは、医療スタッフに睡眠薬の必要性含めて遠慮せずに相談してほしいと思います。

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