日本臨床スポーツ医学会

令和6年能登半島地震で被災された方々へ

第2号記事 2024.01.11 子どもたちに目を向けて下さい!

被災、避難中の子どもたちに眼を向けてあげて下さい!

 このたびの震災では地震、津波、火災、さらに冬の寒さという過酷な条件が加わって成人の被災者の方たちの心身にも大きなストレスが加わっていると推測されます。 阪神淡路大震災、東日本大震災という国内で発生した大震災では子どもたちの心身にも大きなストレスが加わって発育に影響が生じたことが、日本の発育研究者から多くの論文が出されています。海外でも、中国の四川省やインドネシアでの大震災で同様の研究結果が出されています。共通する結果として、主に年少の子どもたちは体重が増え肥満傾向が高まり、中学生以上の年長の子どもたちでは逆に体重増加が止まったり減少したり、という変化です。コロナ禍で身体活動が抑制された結果、世界中で子どもたちの体重増加や肥満の割合の増加が報告され、その影響が長引いていることも報じられています。

 このように多数の観察データに基づく研究報告があるということは、エビデンスが蓄積されているということです。となれば、私たちはエビデンスに基づいて対策を講じなければ、子どもたちに申し訳が立ちません。発育に影響が生じる原因は、直接には運動不足や栄養摂取不足(過剰)かもしれませんが、子どもたちにはどうにもできない環境の変化によると考えるべきでしょう。過去の大震災後は避難所で身体を動かしにくいだけでなく、その後も校庭が使えず、体育も部活動もできなかったことなどが原因とされています。こうした身体活動の要因だけでなく、PTSDやそれに近い心的外傷、大震災前の日常に戻れない生活の強いストレスが視床下部-下垂体-副腎軸という内分泌系や自律神経系の機能を乱して健全な身体発育を抑制してしまうと考えられています。家屋や道路は再建復旧できるかもしれませんが、子どもたちの発育は元に戻せないかもしれません。ぜひ、子どもたちの心身に眼を向けてあげてほしいと思います。子どもたちと一緒に身体を動かして遊んだり、歌を歌ったりなど、子どもたちがいっときでも気持ちが晴れて笑顔になれるような支援もお願いしたいと思っています。アスリートたちも、合宿に行く日数の一部を、被災地の子どもたちと一緒にスポーツをして楽しんでみてはどうでしょう!

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